2019年11月25日 発行149号
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ICAS通信
2019年12月号

「師 走」

12月の花「ポインセチア」

早いもので、あっという間に「師走」の到来となりました。特に、今年は世界の社会、経済情勢が大きな変革を見せた年だったように思います。

つれて、多くの「流行語」が生まれました。高齢者運転暴走事件から「免許返納」「上級国民」が話題になり、消費税と絡んで「ポイント還元」「軽減税率」等買い物手法に変化が生じました。政治にも新しい流れとして「れいわ新撰組」旋風が起こりました。スポーツ界においても女子ゴルフ界で「笑顔のシンデレラ‥‥ シブコ」現象や、ラグビーワールドカップが大盛り上がりで「にわかファン」が急増しました。

この様に新しい流れが生れると同時に、外人観光客のお蔭もあって、見捨てられていた地方都市や古いものが見直される現象も見られました。

来年も変化の波は益々早まっていくことになるでしょう。世界の諸情勢に括目し、後れを取らないよう頑張っていきましょう。どうか、良いお年をお迎えください。

なお、ICASでは12月15日(日)恒例の「クリスマス交流会」を開催いたします。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

 

1.勝池レポート(新連載3)

「偉人の名言から学ぶ投資の心得 -その2-」

古今東西の「偉人の名言」は大変投資の参考になります。今回はその中から2つ ご紹介します。

今回は、史上最も偉大な投資家と、史上最も有名な剣豪の言葉をご紹介します。

投資先企業を選ぶ際の参考になります。

ウォーレン・バフェット アメリカの投資家1930年~

  1. 分散投資は無知に対する防衛だ。自分たちの行動を理解している者にとって、殆ど意味が無い。
    (Diversification is a protection against ignorance. (It) makes very little sense for those who know what they are doing.)
  2. 世界の莫大な富は、一つの素晴らしいビジネスを保有し続けることにより生まれた。そんなに沢山持つ必要は無い。
    (A lot of great fortunes in the world have been made by owning a single wonderful business, you don’t need to own very many of them.)
    出所:”Warren Buffett Speaks “by Janet Lowe 1997

「長期・積立・分散」を資産形成の王道として、どこの金融機関もどのアドバイザーも推奨しています。しかし、分散投資についてはこの偉大な投資家は、資産を大きく増やすための有効な手段とは認めていません。

私も、中国株投信の運用や日本株投信の企画をした経験がありますが、ポートフォリオに50も75も銘柄を分散して組み入れたことはありません。それは、多くの選択肢の中から、自分が十分に理解できる範囲に銘柄を絞り込めてこそプロだと自覚していたからです。

そして、その最適な銘柄の数は13だとも気づきました(その理由については別の号でご説明します)。また、国際分散投資についても、聞こえは良いのですが、ポートフォリオが動物園のようになってしまうので、個人的に全く賛同できませんでした。

宮本武蔵 江戸時代初期の剣豪 1584~1645年

(五輪書 水之巻「兵法の目付と云事」より)

  1. 眼の付け様は、大きく広く付けるなり。観見の二つあり、観の目つよく、見の目よわく、遠き所を近く見、近き所を遠く見ること、兵法の専なり。敵の太刀を知り、聊かも敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事なり。工夫あるべし。

13歳からの60回余りの勝負で無敗だった武蔵の敵の見方が、資産運用で投資先企業を選別する上での参考になります。

前半の一節は、企業を表面的に見るのではなく、広い視野(距離と時間)で観察する事が大変重要だと言っているように聞こえます。

続く後半の敵の太刀を見るのではなく太刀を知るとは、株価の動きに眼を奪われないで、その企業のビジネスの本質、ファンダメンタルズ(敵の場合は生い立ち、流派、能力、武器、心理等か)を見極めなさいと指南されているようです。

また、これは五輪書にはありませんが、武蔵は敵との対戦の前にその戦場に何度も出向いて、地形や太陽の方向等の情報収集を入念に行ったようです。更に、負けそうな相手とは勝負しなかったとも言われています。

このような武蔵の慎重な考え方は、上記のバリュー投資家バフェットの、企業の本質的価値と市場価格の差である安全マージン (Margin of Safety) を見極め、リスク度を理解してから、それが許容できる企業にのみ投資を決めるという、最も重要な投資哲学に似ています。

巌流島の決闘で武蔵が、舟の かい を削って小次郎の「物干し竿」よりも長い木刀を使ったのも、この安全マージンという考え方に近い気がします。

武蔵は、勝負に勝つというより、如何にしたら負けないかを論理的に突き詰めたようです。

因みに五輪書は、”The Book of Five Rings” という題で英文に訳され、ハーバード・ビジネススクールの経営学のテキストとして活用されています。

どんな困難な状況においても勝ち抜く、究極の現実主義者と言われる武蔵の剣術の奥義をまとめたこの兵法書は米国の企業経営にも参考になったのですね。

(来月号からは、インド経済の可能性についての私見を述べます)

【編集部より】当コラム「勝池レポート」は、「鎌田留吉レポート」に代わって、中国株投信の運用、東南アジア株投信の企画、インド株投信の販促などで25年以上のアジア経験を有する、勝池和夫氏による新シリーズです。

2. 株式展望と映画サロン

ムッシュ 望 月

株式展望:「上昇相場は来春まで続く」

米FONCは、7月、9月の金利引き下げに続いて10月30日に世界的なリスクに対する保険として今年3回目の金利引き下げを行いました。日欧を同様に金融緩和の姿勢を示し、これにより世界的な同時金融緩和政策が実行に移されました。

世界の株式市場は、10月12日ないしは15日から上昇に転じました。この時の上昇要因は米中貿易協議の部分合意の可能性が高まり、市場を取り巻く不安要因が取り除かれることでした。

世界の市場の中で割安に放置されていた東京市場(PER12倍程度)が俄かに注目され、11月(5~8日)まで外国人投資家は6週連続の買い越しに転じました。23500円でようやくPER14倍乗せです。

最近3年間のPER水準は12~14倍でした。それを考えると株価は高水準と言えますが、2013年からの平均は14.5倍ですから、決して割高ではありません。

16倍まで買われた時期もあり、現在のEPS1666円に対してPER16倍は、26656円となります。

(画像はイメージです)

来春まで金融緩和の流れが続くという前提で27000円説を取ります。強気の対応が報われそうです。

今月末のFOMCは非常に重要な鍵を握っています。

映画サロン:紹介作品は「閉鎖病棟―それぞれの朝―」

先月は7作品を観、通算101本となりました。第1位は「ジョーカー」第2位は「マレフィセント2」第3位「フッド:ザ・ビギニング」第4位は「最高の人生の見つけ方」第5位は「楽園」第6位は「空の青さを知る人よ」で、番外編として無声映画とフランス八重奏のマリアージュ「オペラ座の怪人」。

これからの映画の楽しみの中に無声映画とピアノ演奏があり、8月には「猛進ロイド〜Girl Shy〜」を観ました。12月13日から上映の「カツベン」に期待しています。

2009年6月上映の西川美和監督作品「ディア・ドクター」に、初主演で笑福亭鶴瓶が偽医者を演じました。観た時に日本アカデミー賞を取ると確信した作品で、予想通りに第33回アカデミー賞を授賞しました。永遠のマドンナ八千草薫も出演していました。

11月1日に上映がスタートした作品「閉鎖病棟―それぞれの朝―」に主演で死刑囚役を演じています。精神科病棟で起きる殺人事件をきっかけに、患者達の思いが交錯します。殺人を犯した秀丸(鶴瓶)、常に明るく生きようとする姿は、精神を病んだ患者だけでなく観客をも感動させます。今年のアカデミー賞にノミネートされる作品としての貫禄があります。綾野剛、小松菜奈も好演です。

3.株式投資力クイズ問題答えは最下段にあります)

最近の政治経済情勢からの出題です。各問に答えてください。

1:2018年度の東証上場会社の従業員1人あたりの平均年収で、正しいものを1つ選びなさい

  1. 700万円
  2. 800万円
  3. 1000万円
  4. 1200万円

2:11月7日に発表されたトヨタ自動車の決算ですが、間違いを1つ選びなさい

  1. 世界販売台数は欧州・中国での販売増が貢献した
  2. 世界景気の減速を受けて前年同期比3%の減益でした
  3. 中国でのトヨタのシェアは6%程度である
  4. トヨタはCASE(コネクテッド、オートノマス、シェアリング、エレクトロシティ)の実証段階に入った。

3:楽天の決算に関しての問題で、間違いを1つ選びなさい

  1. 楽天の1~9月の最終赤字は141億円であった
  2. 赤字の要因は11%出資するライドシェアの株式評価損である
  3. 携帯電話事業での先行投資で営業赤字は334億円である
  4. 電子商品取引(EC)やクレジットカードの金融部門でも苦戦を強いられた

4:2020年3月期の上場企業の決算状況に関する問題で、間違いを1つ選びなさい

  1. 上場企業は2期連続の減益(10%程度)となる見通しである
  2. 2期連続の減益は金融危機後では初めてのことである
  3. 業種別で減益幅が最も大きいのが電機である
  4. 消費増税後の懸念から製造業よりも非製造業の減速が大きい

5:国債についての問題で、間違っているものを1つ選びなさい

  1. 米国で50年債、100年債の発行を検討している事実はない
  2. 日本の最長の国債は40年債である
  3. 米ムニューシン財務長官は超長期国債の発行に前向きである
  4. 50年債の発行は利払い負担軽減につながる可能性がある

お知らせ

12月のイベント:

  • 株式投資塾(昼間編):12月10日(火)16時~イカス事務所
  • クリスマス交流会  :12月15日(日)17時~銀座BRB倶楽部
  • 株式投資塾(夜間編):12月17日(火)18時半~イカス事務所
  • カラオケ倶楽部   :12月20日(金)18時半~西新橋「倶楽部エル」
  • シネマ倶楽部    :12月25日(水)15時~有楽町映画館&懇親会

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【活かす通信】

発行人:特定非営利活動法人イカス

発行責任者:林 孝 男

ウェブ:www.toushi-club.com メール:staff@toushi−club.com 

電話:03-3432-5859 FAX:03-3432-5869

*当メールマガジンについてのご意見は上のメールにてお願いいたします。

【株式投資力クイズの答え】

1:〈A〉700万円
2:〈B〉前年同期比3%の増益でした
3:〈D〉電子商取引やクレジット部門の売上は好調であった
4:〈C〉製造業の減益幅は12%減で、自動車が最大の減益でした
5:〈A〉米国では双子の赤字の対策として50年債や100年債構想が浮上している