2020年3月25日 発行153号
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ICAS通信
2020年4月号

「不安膨らむ春の到来」

花の雲 鐘は上野か 浅草かーー 遥かに見渡せば、まるで雲と見間違えるほどの花盛り。聞こえてくるのは寛永寺、それとも浅草寺の鐘であろうか。
これは松尾芭蕉が詠んだ有名な一句です。江戸ののどかな春が伝わってきませんか?

今年も東京の春を告げる桜の開花宣言が3月14日に発表されました。平年より1週間も早い史上最速とのこと。いよいよ春爛漫の訪れというときに新型コロナウイルス感染症がアッという間に世界に拡散し、更に深刻な影響を及ぼそうとしております。

お花見の中止等は勿論、世界中の経済活動が急収縮し、さらには世界同時株式大暴落を引き起こすことになってしまいました。
本来なら素晴らしい桜の季節が、計り知れない不安の春となってしまいました。
一刻も早く感染が収まり元の軌道に修復されていくことを祈りたいと思います。

 


1.勝池レポート(連載7)

「成長株と割安株」

株式の投資手法は、成長株グロース株投資割安株バリュー株投資に大別されます。前者は、企業収益の成長性に注目し投資し、後者は、企業の利益や資産の額に対して過小評価されている株式を選別します。

私の場合は、証券会社や運用会社でのほとんどの人生を、成長株の発掘や推奨に費してきました。今考えれば成長株というよりは投機色が強い材料株だったかも知れません。最初に割安株と付き合いだしたのは、1998年に米系の投信会社に入社し、同社がグローバルで運用するバリュー株投信の日本でのマーケティングを担当した時です。

そのファンド、確かに過去のパフォーマンスは良かったのですが、このバリュー株投資の魅力を日本の投資家に理解してもらうのは大変困難でした。販売促進の際よく説明に使ったのは、バリュー株投資は「真冬に麦藁帽子を買うようなもの」という例でした。確かにそれだと、いくらか安く買えるイメージですが、日本の投資家は、真夏に熱中症対策に良いとかのセールストークで、麦藁帽子を高値で推奨され続けてきたので、バリュー株は刺さらなかったみたいです。グロースでは派手ですが、バリューは地味ですね。

更に悪いことに、1990年代後半は世界がITバブルの最中にあり、ドットコム関連やゲノム関連株が赤字なのに短期で何倍にも値を飛ばしていました。私の担当は、その対極にあった食品株や公益株が中心の株式投信でした。その商品は時流に全く乗っていなかったため運用成績は振るわず、私はよく、アメリカ西海岸にある運用会社に、説明が難しいだけではなくパフォーマンスが悪いと、クレームを付けていました。

しかし、そのアメリカ西海岸にあるバリュー株専門の運用会社を訪問した時、聞いて驚いたことがあります。「うちのお客の中に有名なスポーツ選手がいるんだ。誰だと思う。タイガー・ウッズだよ」。この話はとても意外でした。ウッズは、1997年のマスターズに史上最年少で初優勝した、まさにスポーツ界の成長物語のヒーローだったからです。なんでそんなピカピカのグロースな人がこんな地味なバリューを買っているのだろう?

その後もウッズは、メジャー選手権14勝など多くの栄光を勝ち取り、史上最も偉大なゴルファーの一人にまで登りつめましたが、それも長くは続かず不倫騒動や病気などの深いどん底も経験することになります。彼がその冬の時代に備えて、長期投資でバリューを買っていたのかどうかはわかりません。ひょっとしたら、グロース株投信も持っていたのかもしれません。しかしながら、タイガーの資産運用は、誰かのアドバイスがあったにせよ十分に計画されたものであったような気がします。

その後間もなく、アメリカのITバブルは弾けました。そして夢を追いかけたグロース株は急落し、反対にそれまで長い間、実力に比べ割安の放置されていたバリュー株が上昇を開始したのです。

ただ、私は単純に成長株を追いかけるのは危険で、割安株を丹念に拾うのが最良の投資手法だと言っているのではありません。ロシアの作家プリボイ(写真右上)は次のように言っています。「よい女房をもらおうと思ったら、ダンスの輪の中から選ばずして、畑で働いている女性の中から選ばなくてはならない」。しかし、ゲーテ(写真右下)はこうも言っています。「男は頭でこそ家事のうまい女を嫁にと探すが、心では、空想では別の魅力にあこがれているものだ」。
人生も投資も、成長株と割安株(ダンスの輪と畑)の両方あって楽しいのでしょうね。

2. 株式展望と映画サロン

ムッシュ 望 月

株式展望:「下落相場はどこまで続く」

相場の最終局面のここ5年以内の動きを検証してみます。
2017年4月28日の安値は18,840円、同年6月23日に20,318円の高値を付け同年9月8日に安値を19,239円(A)の安値を記録しました。その後株価は上昇トレンドを描き2018年1月26日に24,129円の高値を付け、その後反落同年3月30日に安値20,347円を付けました。その時の下落幅は3,782円、下落率は15.7%、下落期間は約3ヵ月(64日)でした。

その後再度上昇に転じ同年10月5日に高値24,448円を付け、その後反落12月28日に安値18,948円を付けました。その時の下落幅は5,500円、下落率は22.5%、下落期間は約3ヵ月(84日)でした。

今回は1月24日に高値24,108円付け、その後反落に転じました(三尊天井形成)。新型肺炎の拡大に伴い安値を更新し、3月13日には1,128円の大幅下落を記録し安値は16,690円となりました。当日の出来高は23億3,406万株まで拡大しました。3月13日までの下落幅は7,758円、下落率は31.8%で、35日間(営業日ベース)という非常に短い期間での下落幅・率です。

通常時の下値目標はPBR(株価純資産倍率)1倍の20,700円となりますが、最悪の場合はリーマンショック時0.81倍の16,767円が目安となります。利益面で見ていきますと、2019年3月期の1株当たり利益1,751円(前年比1.9%減)が2020年3月期の予想の6%弱となると1株当たり利益が1570円程度となり、PER(株価収益率)10倍から12倍のゾーンを前提にした相場では、日経平均は15,700円から18,840円のボックスゾーンとなります。

2021年3月期は各企業が控え目に予想をし、15%との減益予想となると、1株当たり利益は1,335円まで落ち込みます。つまり、下降トレンド継続となります。また、今年の5月位までにコロナウイルスが収まり東京オリンピックが実施されないと、かなり厳しい不況状態となります。ただし、悪材料は発表されると織り込みとなります。中止・延期の発表前までは不安定な状態が継続ということです。

米FRBが金利を0.5%下げたにも拘わらず、NYダウが下落し、更に1%金利を引き下げても市場の下落を止めることが出来ませんでした。効かない注射を打つとどうなるのか。財政や減税等の出動を求めているのかもしれません。ただウイルスワクチンの開発待ちかもしれません。

NYダウは既に20%以上の下落を記録し、弱気相場入りしています。過去の弱気相場での下落率は平均38%で、元の水準に回復するには平均2年4ヵ月を要しています。完全に世界的な景気後退(リセッション)入りが明確になっているだけに、今後は景気の回復のタイミングを占う展開となります。

2000年のITバブル、2008年のリーマンショック(金融危機)、2020年のコロナウイルスをきっかけとするGAFAバブル崩壊で、10年程度のサイクルでの大幅な市場調整と言えそうです。今回の日経平均株価はソフトバンクGの下落が大幅に響いています。リバウンド狙いはTOPIXのリバウンド狙いで対応したいところです。

映画サロン:紹介作品は「Fukushima 50(フクシマフィフティ)」

直近では13作品、通算では25作品を観ました。
米アカデミー賞作品賞にはアジアで初めて韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が選ばれました。日本アカデミー賞には2019年6月に公開された「新聞記者」が選ばれました。同作品は、現安倍政権に対する批判の作品だけに上映される劇場も限定されました。個人の予想は「閉鎖病棟それぞれの朝―」を予想しましたがノミネート作品にはなりましたが、栄冠を手に入れることは出来ませんでした。

2月のランキングは、1位はシャーリーズ・セロン主演の「スキャンダル」、2位は「37セカンズ」、3位は「母との約束250通の手紙」、4位は「アイリッシュマン」、5位は「チャーリーズ・エンジェル」、6位は「ハスラーズ」、7位は「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」です。

今月の紹介作品は「Fukushima 50フクシマフィフティ)」で、2011年3月11日午後2時46分に起きたマグニチュード9.0、最大深度7という地震が引き起こした想定外の津波が、福島第一原子電力発電所(イチエフ)を襲い、浸水により全電源が喪失したイチエフは原子炉を冷やさなければならない状態に陥りました。その危機的な状況を1号機担当の伊崎当直長と全体の指揮を執る吉田所長は、部下を鼓舞しながら状況把握に努め、本部や官邸の理不尽な指示に怒りを覚えながらも、奮闘の上、東日本の壊滅を防ぎます。

現在のコロナウイルスの政府対応を見るにつけ、当時の民主党政権と同じ無策ぶりを感じざるを得ません。

3.株式投資力クイズ問題答えは最下段にあります)

最近の政治経済情勢からの出題です。各問に答えてください。

1:年金運用に関する問題で、間違っているものを1つ選びなさい

  1. GPIFとは年金積立管理運用行政法人のことである。
  2. GPIFの主な運用先は国内債、国内株、外国債、外国株である。
  3. 長期の実質利回りは1.7%である。
  4. 資産の運用比率は株式(国内・国外)が60%である。

2:年金運用に関する問題で、間違っているものを1つ選びなさい。

  1. GPIFの投資配分見直しは2014年10月以来である。
  2. 当時の国内株と外国株の構成比は、それぞれ15%でした。
  3. 配分の見直しは定期的に行うものである。
  4. GPIFの運用金額は約160兆円である。

3:米連邦準備委員会(FRB)に関する問題で、間違っているものを1つ選びなさい。

  1. 臨時総会を開き、FFレートを0.25%引き下げました。
  2. 2020年3月3日の臨時総会は、3月17~18日に行う予定を前倒したも のです。
  3. 臨時総会の実施は2010年10月以来、11年半ぶりのことです。
  4. 新型コロナウイルによる市場混乱や市場不安を抑える狙いがあります

4:世界株全体の値動きを示す全世界株価指数(MSWI)に関する問題で、間違いを1つ選びなさい。

  1. 2月24~28日の間の下落は11%に達し、2019年10月以降の上昇を一気に帳消しにしました
  2. この週の下落幅は3588ドルとリーマンショックを超える下落幅となりました。
  3. テスラを中心とする成長株の売りが嵩み、テスラは25%超の下落となりました。
  4. 日経平均株価は週間で2234円下落し、下落幅はリーマンショック以来の大きさでした。

5:株価の下落を受けて金利の急落が始まりました。間違っているコメントを1つ選びなさい。

  1. 低格付けの企業の社債(ハイイルード債)に対する投資の引き上げが始りました。
  2. 米ハイイールド債と米国債との利回り差が2月28日に5.21%となりました。
  3. 5%を上回るのは、景気後退懸念のためにFRBのパウエル議長が利上げ停止を示唆して以来です。
  4. 10年債利回りが3ヵ月債の利回りを下回ることはありません。

4. イカスからのお知らせ


  • 株式投資塾(昼間編):4月14日(火)16時~イカス事務所
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【活かす通信】

発行人:特定非営利活動法人イカス

発行責任者:林 孝 男

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電話:03-3432-5859 FAX:03-3432-5869

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  1. D〉国内債35%、国内株25%、外国債15%、外国株25%である。
  2. C〉前回の見直しは、マイナス金利政策により収益性が低下したことで債券運用比率を引 き下げたことに見直しが行われました。
  3. A〉金利を0.5%引き下げました。市場は17~18日の更なる引き下げを要求しています。
  4. B〉週間の下落幅は3583ドルとリーマンショック後の下落幅1874ドルを遥かに超えました。
  5. D〉10年債の利回りが3年債の利回りを下回ることは景気後退の予兆で逆イールドと呼ばれ、このタイミングでは円高に振れやすく、東京市場の株の下落に拍車がかかります。