2020年5月25日 発行155号
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ICAS通信
2020年6月号

「梅 雨」

いよいよ6月、新緑から梅雨の季節に入ります。梅雨前線の活動が活発になり、しとしとジメジメした憂鬱な時節を迎えようとしております。特に今年はコロナウイルスの世界的な蔓延と相まって、梅雨がひときわ重苦しく閉塞感漂う思いに駆られることになりそうです。

さて、梅雨を詠んだ松尾芭蕉の有名な俳句「 五月雨さみだれ を集めて早し最上川」(ここでいう5月は旧暦、現在の6月に相当)は現在の教科書などでも取り上げられています。雨が川に流れ込み水嵩がどんどん上がり、その勢いがものすごいことが伝わってきますね。梅雨の句でも強いエネルギーを感じます。

私たちも梅雨にもコロナにも負けない心の免疫力を培いつつ、強い意志をもって立ち向かっていきましょう。

 


1.勝池レポート(連載9)

「中国経済の捉え方 」

中国経済についての日本の専門家、経済評論家、証券会社のエコノミストなどの見方は、概して長い間とても悲観的でした。

中国経済に精通しているはずの、日本に住んでいる中国人専門家の予測でさえ大きく外れました。中国経済は直ぐにバブルが崩壊するどころか、日本経済を簡単に凌駕し、アメリカ経済をも脅かすまでに成長するとは誰も予想しませんでした。ですので、今更大間違いを認めたくないのか、上海株の暴落、米中貿易戦争、また現在のコロナウイルスの感染拡大などの、何か事が起きると「それ見たことか」と今までの自分たちの的外れな意見を正当化させようとします。

私は、この懐が深く、災いを転じて福となすような中国経済を、例え話で考えていました。
中国経済を中華料理に例えて説明すると、その発展の歴史は78年の改革開放を受けて、80年代に深圳、珠海などの広東省に設立された経済特区から始まっています。つまり広東料理が中国経済のスターターです。次の90年代にはドラゴンヘッド戦略(上海を龍の頭に譬えた)で上海料理が加わりました。 黄浦江こうほこう東岸の浦東新区ほとうしんくが経済発展の中心に据えられました。更に2000年代に入ると、中国経済の勢いは北京、天津などの京津冀けいしんき経済区に北上しました。北京料理に広がった訳です。そして、2010年代には、残された中国四大料理の一つである四川料理がテーブルに並び、成都や重慶などの内陸部がホットになりました。

このように、中国経済はフカヒレスープに始まり、上海小籠包、北京ダック、マーボー豆腐へと広がって行った流れです。経済の発展が殆どの地域で同時の起こったのではないので、経済成長は予想を超えて持続しました。

「一帯一路」構想と習近平

では、これからはどうなるかと言うと、おそらく中国政府は中国料理の出前のような経済発展戦略をとるような気がします。中国政府の「一帯一路」構想は、この中国料理を陸と海からヨーロッパまで広げていく政策のようです。そして、中国料理のメニューは、再び広東料理から洗練されてくると思われます。深圳のハイテク産業が良い例です。更に日本料理、タイ料理、ベトナム料理、インド料理などとのコラボレーションが進んで、ヌーベ ルシノワ(新中華料理)に進化していくと見ています。

最近、中国はアメリカとの摩擦も手伝って、インドへの直接投資や株式投資を大変積極化しています。これは、チャーハンにカレーをコラボさせた、経済のヌーベルシノワ化のように思われます。中国は非常に戦略的です。

いずれにしても、ポストコロナには、世界の経済が再びカレーとチャーハンの時代になるような気がします。コロナ前に長く続いたハンバーガー(アメリカ)中心の時代は終わりかけているようです。

2. 株式展望と映画サロン

ムッシュ 望 月

株式展望:「大相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育つ」

新型コロナウイルスが欧米で爆発的に感染拡大し、日本は初の緊急事態宣言をし、先の見えない状態が続いています。

株式市場は戦後最悪の不況を織り込む動きを見せ、リーマン・ショック以上のスピードで下落をし、焼け野原状態となりました。その過程で、一番底を確認する指標が幾つか点滅しました。
1つ目は、市場の変動予測を示すVIX(恐怖)指数が82.6(3月16日)と08年秋のリーマン・ショック時の80.8(11月20日)の水準まで急騰し、投資家心理はピークに達しました。
2つ目は、解散価値であるPBR(純資産倍率)が0.82倍(3月16日)とリーマン・ショック時のボトムである0.81倍(09年3月9日)に次ぐ水準まで急低下しました。
3つ目は、ショック安による株価の下落幅が▼7737円と、リーマン・ショック時の▼7606円を上回りました。


厚生労働省が若者の啓発のために作成した
疫病を払うとされる妖怪「アマビエ」のバナー(同省提供)

これらから判断すると、コロナショックでの株価はリーマン・ショック級の極限まで売りたたき一番底を形成しました。共通点は、①どこまで広がるか分からない恐怖感、②世界的な経済への打撃と終息が見えないことにあり、相違点は、①金融システムの問題はない、②バブルの発生ではない、③アルゴリズム(コンピューター売買)が下げ幅を増幅、④同時多発テロや東日本震災などの突発事故(構造的な問題ではない)であり、終息にかかる時間が違うこと。
その対策として、各国の中央銀行は緊急の金利引き下げや資産購入という大規模な流動性の供給の発表により株価は反転を開始し、NYダウやナスダック指数は下落幅の半値戻しの水準を達成しました。

日本でもかってない規模の経済対策(GDPの約2割規模の108兆円)を発表し、ようやく4月末に東京市場は半値戻しを達成しました。流動性の供給や当局による需要創造(財政出動)は必要ですが、一番の特効薬は治療薬・ワクチンの開発で、治療薬やワクチンの治験の結果が待ち望まれます。

緊急事態宣言の解消相場も近そうです。
明けない夜はない(シェークスピア)」
悪いニュースは投資家のベストフレンド(バフェット)」

映画サロン:今月も映画から図書へ

今月も、映画の代わりに始めた巣ごもり読書です。
4月、5月と映画鑑賞はゼロ、過去にない体験でした。一方読書は進み、①石弘之の「感染症の世界史」②黒川敦之の「ソフトバンク崩壊の恐怖と農中・ゆうちょに迫る金融危機」③渡瀬裕哉の「メディアが絶対に知らない2000年の米国と日本」④乾正人の「官邸コロナ敗戦」⑤宮崎正弘の「『コロナ以後』中国は世界最終戦争を仕掛けて自滅する」⑥古森義久の「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」。小説は⑦上田秀人の「勘定侍 柳生真剣勝負〈一〉召喚」⑧垣谷美雨の「あなたの人生片付けます」⑨幸田真音の「大暴落 ガラ 内閣総理大臣・三崎皓子」⑩海堂尊の「ナニワ・モンスター」⑪海堂尊の「ブラックペアン1988」⑫海堂尊の「ジーン・ワルツ」⑬門井慶喜の「天才たち値段」⑭今野敏の「特殊防諜班 凶星降臨」⑮今野敏の「特殊防諜班 諜報潜入」⑯今野敏の「ST警視庁科学特捜班 毒物殺人」を読みました。

⑤の「『コロナ以降中国は世界最終戦争を仕掛けて自滅する」と⑩の「ナニワモンスター」が気になる作品です。浪速府(大阪かな?)で発生した新型インフルエンザ「キャメル」、致死率が低いにもかかわらず、報道は過熱の一途を辿り、政府はナニワの経済封鎖を決定し、壊滅的な打撃を受ける関西圏、この事態に政府はどう動くか、現在の新型コロナと比較しながら読むと参考になります。2014年(平成26年)作品で、2012年のMERS(中東呼吸器症候群)にヒントを得たサイエンスフィクションです。

3.株式投資力クイズ問題答えは最下段にあります)

最近の政治経済情勢からの出題です。各問に答えてください。

1:各国の対中依存度に関する問題です。間違いを1つ選んで下さい。

  1. ドイツで輸出・輸入とも7%台
  2. イギリスは輸入5.9%、輸出は8.8%
  3. 米国は輸入16.3%、輸出は8.8%
  4. 日本は輸入9.2%、輸出は5.1%

2:新型コロナの治療薬に関する問題です。間違いを1つ選んでください。

  1. アビガンは富士フイルム系列の富山化学が製造する治療薬です
  2. 同社の原材料は中国に依存していましたが、宇部興産、カネカ、デンカ、広栄化学等が増産体制に踏み切りました
  3. アンジェスも治療薬の開発に踏み切りました
  4. 広栄化学はレムデシビルの原材料を生産しています

3:新型コロナに関する問題です。間違いを1つ選んでください。

  1. 日本光電は呼吸器を生産する企業です
  2. クラボウはマスクの専業メーカーです
  3. 重松製作所は医療用マスクのメーカーです
  4. OSGコーポレーションは消毒用次亜塩素酸水を低コストで生産する自動生成装置のメーカーです

4:新型コロナに関する問題です。間違いを1つ選んでください。

  1. 2月1日に新型コロナウイルスは日本で指定感染症に認定されました
  2. 1月30日にWHOが緊急事態宣言をしました
  3. 3月11日にWHOがパンデミック(世界的大流行)を表明しました
  4. 3月10日に武漢はロックダウン(都市封鎖)をしました

5:新型コロナにより影響を受けた政治経済に関する問題です。間違いを1つ選んでください 。

  1. 東京オリンピックは2021年7月23日に延長されました
  2. 2020年3月期の上場企業の決算で、純利益は2年連続の減益となりました
  3. この減益の要因は消費税増税によるものです
  4. 米中貿易摩擦も世界経済減速の要因の1つです

4. イカスからのお知らせ


  • 株式投資塾(昼間編):6月9日(火)16時~イカス事務所
  • 株式投資塾(夜間編):6月16日(火)18時半~イカス事務所
  • カラオケ倶楽部   :6月26日(金)18時半~西新橋「倶楽部エル」

*新型コロナ問題でネット会議又は中止になる可能性があります。


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発行責任者:林 孝 男

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  1. D〉日本は1番依存度が高く、輸入は21.1%、輸出は24.7%
  2. C〉アンジェスは新型コロナの治療薬ではなく、ワクチンの開発に踏み切りました
  3. B〉クラボウはマスクの専業メーカーではなく、繊維事業、化成品事業などのほか、ウイルス検査薬の製造もしています
  4. D〉武漢は春節が始まる前日の1月23日にロックダウンをしました
  5. C〉消費税増税は日本の特殊要因で、最大要因は新型コロナによる世界的な需要と供給減少で、1929年に匹敵する減少です