2020年6月25日 発行156号
(バックナンバーはこちら

ICAS通信
2020年7月号

「ニュー・ノーマル」

梅雨が明ければ夏休み入りといろいろな風物詩に彩られる7月となります。そんな中、最近しばしば耳にするようになったのが「ニュー・ノーマル」という言葉です。

リーマン・ショック後、世界経済は立ち直っても元の状態には戻れないとの見解から生まれたのが「ニュー・ノーマル」という言葉です。つまり、構造的な変化が避けられない状態を指す用語といえます。今回の新型コロナウイルスの世界的蔓延とともに、再びこの言葉が脚光を浴びつつあります。

医療、衛生関係は勿論、教育制度、人間関係、テレワークや在宅勤務などを包含した働き方、ネット社会の到来による商慣習や流通の変革など、これらへの対応をいち早く確立した国家や企業が「ポストコロナ」世界のけん引役を担っていくと思われます。

投資に対する価値判断も劇的なパラダイムシフトが起こるかもしれません。お互いに熟慮しながら投資手法を探って行きましょう。

 


1.勝池レポート(連載10)

「GAFAMとインド 」

GAFAMガーファム とは、アメリカのテクノロジー企業5社、G(Google)A(Apple)F(Facebook)A(Amazon)M(Microsoft)の頭文字を取った呼び方です。これらの大手5社の株式時価総額の合計(約560兆円)は、日本の東証1部約2,170社の合計を上回り、最近大きなニュースになりました。
しかも、新型コロナとの共存を前提としたテレワークやネット通販などがより日常となるニュー・ノーマルの時代にはいると、これらの企業は更に大きな勝ち組になると予想されています。

今回は、このGAFAMとインドとの関係についてお話します。

GAF(グーグル、アップル、フェイスブック)の創業者である、ラリー・ペイジ、スティーブ・ジョブズ、そしてマーク・ザッカーバーグは、3人ともインド北部のウッタラカンド州にある寺院(Kainchi Dham Ashram)を訪れています。
中でもスティーブ・ジョブズが1974年、未来のビジョンを考えていた19歳の時にその寺院で、東洋の霊性、直感的なものの重要性を悟り、その経験が2年後のアップルの創業のきっかけとなったという話は有名です。

また、ジョブズをメンター(指導や助言をしてくれる人)としていたマーク・ザッカーバーグも2008年フェイスブックを起業したばかりの不安定な24歳の時に「自分の信じるミッションに再び繋がりたければインドの寺に行け」というジョブズのアドバイスにより同寺院を訪れました。
そこで彼はインドの人々の繋がり方の観察から、ネットワーク事業の重要性を再認識し同社は苦境から立ち直ることが出来たとインドのモディ首相との対談で語っています。その寺院はその後間もなくザッカーバーグ寺院と呼ばれるようになります。

(左から)ラリー・ペイジ スティーブ・ジョブズ マーク・ザッカーバーグ

更にグーグルとマイクロソフトのインドとの関連について言えば、両社のCEOのサンダー・ピチャイとサティア・ナデラは共にインド出身です。
マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツは、インドがこれから数年の内に世界で最もデジタル化した国になると予想しています。さらに彼は昨年の11月のインド訪問の際に「短期的なことは分からないが、向こう10年で見ればインド経済はかなり早いスピードで成長し、政府は貧困の撲滅とヘルスケア、教育の拡充に大胆に投資をすることが可能になるであろう」と述べています。

アマゾンのジェフ・ベゾスも、同社のこれからの成長戦略の中で最も重要なのはインドの電子商取引とテクノロジーへの投資だと株主総会での質問に答えています。彼は今年の1月にニューデリーで開かれたビジネスサミットでも「21世紀はインドの世紀になると予想する」(“I predict that the 21st century is going to be the Indian century”)と大変インドを有望視する発言をしています。そして、実際にインド南部ハイデラバードに開設した世界最大の同社のコーポレートキャンパスを含めてインドに巨額を投資しています。

このようにインドは、その精神世界のエネルギー、経営者の能力、経済発展の可能性を背景に、GAFAM企業の創業から、苦境の克服とグローバル化、そしてこれからのAIを中心とした成長戦略にも大きく関係していることが分かります。

最後にアップルのスティーブ・ジョブズに話を戻します。

左の画像はジョブズが2011年に56歳で亡くなる数日前、病室で妹に自分の葬儀に来てくれた方々に渡してくれと頼んだとされる書籍です。同書はジョブズが唯一iPadに入れて生涯読み続けた愛読書で、日本では「あるヨギの自叙伝」という書名で1983年に出版されています。内容は、パラマハンサ・ヨガナンダというインドのヨガの聖者の波乱に富んだ生涯を綴っています。
常識では考えられないようなインドの聖者達の奇跡や超常現象などが数多く紹介されているので、少し引いてしまいますが、ジョブズは人間が根本的に持つ直感(Intuition)の重要性を伝えたかったのではないかとこの本を私に譲ってくれたインドの友人は言っていました。

東洋の精神的な世界を扱ったこの本は、茶色の木の箱に入れられて、スタンフォード大学で行われたジョブズの追悼式への参加者約800名に配られたそうです。実用性中心の西洋のそれも理屈が幅を利かせるTechの世界のど真ん中に生きるシリコバレーの人たちが、この本の内容をどのように捉えたのか大変興味深いですね。

2. 株式展望と映画サロン

ムッシュ 望 月

最近の株式市場:「最近の政治情勢と株式の現状」

補正予算の編成時に、全国民への一律10万円に変更したこと、検事長法案改正案の先送り等官邸の意向がひっくり返される事態が続いています。
そこに安倍首相の肝いりの政策であった秋田県と山口県で進めていた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」配備計画が、河野防衛相により突然停止が発表されました。
安倍派が押していた河井案理参議院議員と夫の河井克行元法務相が公職選挙法違反で逮捕されました。政権の終わりを象徴するかのように立て続けて起きる不祥事で次の政権に向けての動きが加速しそうです。

そのような不安定な政局下ですが、積極的な経済対策の効果もあり5月の米小売売上高は前月比17.7%増と過去最大の上げ幅を記録しました。全米住宅建設業界(NAHB)が16日に発表した6月の住宅市場指数も前月から21ポイント上昇し58となり、2カ月連続の上昇です。その消費はネット販売が中心で4月に前年同月比23%増、5月は31%増と伸び率は高まっています。この回復に貢献したのは若年層でした。

2020年6月19日、6月の「月例経済報告」が発表された

国内も政府の月例報告(6月19日)では、景気判断を2年5ヵ月ぶりに上方修正しました。また5月の輸出は28.3%減とリーマン以来の下落幅となっています。このような環境下ですが、日経平均株価は23,000円台を回復し、コロナショック前の高値24,000円を窺う動きをみせています。1987年10月のブラックマンデーでは4ヵ月で元の水準に戻したことがあり同じ大規模金融緩和と言う側面だけに可能性は十分あります。
経済はリーマン・ショック並みで回復には2~4年の月日を要しそうです。米FRBも2022年末までのゼロ金利維持を表明しています。今後の焦点は1987年から1989年末までに起きたバブル相場となるかが一つの観点です。

映画サロン:「読書の楽しみ」

新型コロナの話題が出だした2月初旬頃から、インフルエンザをテーマにした小説、岡田晴美著の「H5N1強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ」「隠されたパンデミック」、福田和代著の「バベル」、海堂尊著の「ナニワ・モンスター」、高嶋哲夫著の「首都感染」、吉村達也著の「感染列島」、大原省吾著の「首都圏パンデミック」を読みました。

特に自然災害をテーマにしたクライシス小説、危機に対して人々がどう立ち向かうのかを描くことで定評があるのが高嶋哲夫氏です。1994年作の「メルトダウン」、2004年作の「M8」、2005年作の「TUNAMI津波」、2008年作の「ジェミニの方舟、東京大洪水」、2010年作の「首都感染」等があります。東日本大震災の6年前に発表した「TUNAMI」は衝撃的で、先見性に驚きました。津波の高さは20メートルに達し、発電所の冷却ポンプが停止しメルトダウン寸前まで事件が悪化する等そんな馬鹿なことが思ったことが現実となったのです。

作家の 高嶋哲夫氏 とその著書

M8」の舞台は首都圏で、阪神淡路大震災の9年後に人々が天災を忘れたころに警告を発した作品です。「首都感染」は、SARSから8年目に書かれ、人々が感染症の怖さを忘れたころに出版されました。本作でのウイルスは最も恐れられている強毒性のH5N1で致死率は60%と見積もられたものです。小説の中で、中国はメンツを重んじる余り国内での流行を隠し続けたことで災厄は簡単に世界規模に広がり、首都東京では感染の拡大を防止するために隔離状態という方法を取ります。

最終的には、どのテーマでもスーパーヒーローの登場で救済されるので、未来に向けてのノンフィクションを安心して読むことが出来ます。災害大国に住む国民としては、数年おきに読んで災害に備えて起きたいものです。

3.株式投資力クイズ問題答えは最下段にあります)

今回はアフターコロナのテーマを考えてみます。 以下の問題にぜひ挑戦してください。

1:テレワークに関する問題です。間違いを1つ選んで下さい。答えをみる

  1. テレワークとは、総務省の定義では、ICTを利用して時間や場所を有効に活用できる働き方です。
  2. ICTとは情報通信技術のことです。
  3. 人口減少時代における労働人口の確保、地域の活性化に寄与すると注目されていた働き方です。
  4. 新型コロナウイルスの影響により、新たに認識された働き方です。

2:以下は4月20日にNTTデータ経営研究所により発表された調査です。間違いを1つ選んでください。答えをみる

  1. テレワーク及びリモートワークに取り組んでいる企業の割合は39.1% です。
  2. テレワーク継続の企業の増加は止まりました。
  3. GMOは1月27日より4000人規模で在宅勤務に移行しました。
  4. 従業員が1000人以上の企業では45%テレワークやリモートワークを開始しています。

3:テレワーク環境の整備に不可欠な各種ソリューションを提供する会社があります。間違いを1つ選んでください。答えをみる

  1. ソリトンシステムズ(3040)は、セキュリティ対策ソフトとシステム構築が柱です。
  2. チェンジ(3962)は、官公庁の情報処理を携帯端末とITで効率化する仕組みを開発提案しています。
  3. ブイキューブ(3681)は、Web会議などのコミュニケーションサービスを提供しています。遠隔医療が将来の課題です。
  4. アセンテック(3565)は、仮想デスクトップのソリューションサービスを提供しています。

4:5Gに関する問題です。間違いを1つ選んでください。答えをみる

  1. エーデンの通信機器大手のエリクソンは、5G契約が25年までに世界で26億件に達する見通しです。
  2. 5G通信の開始により、スマートフォンがいつでもどこでも可能となりました。
  3. KDDI(9433)、NTTドコモ(9437)、ソフトバンク(9434)の大手通信社は3月下旬から一斉に商用サービスを開始しました。
  4. 5Gにより医療・介護や観光、モビリティ等様々な分野での実証実験が進んでいます。

5:全国展開する5Gだけではなく地域の自治体や企業が主体となった特定の地域のネットワークにも期待があります。間違いを1つ選んでください 。答えをみる

  1. JTOWER(4485)は、ローカル5G 向けソリューションを手掛けています。
  2. NEC(6701)は、単独で5G活用によるDXを推進しています。
  3. IIJ(3774)は住友商事(8053)とローカル5G活用を目的とした新会社を設立しました。
  4. 富士通(6702)は、国内で初めてローカル5G免許を取得しました。

4. イカスからのお知らせ


  • 株式投資塾(昼間編):7月14日(火)16時~イカス事務所
  • 株式投資塾(夜間編):7月21日(火)18時半~イカス事務所
  • カラオケ倶楽部   :7月17日(金)(金)18時半~西新橋「倶楽部エル」

*新型コロナ問題で中止になる可能性があります。


  1. イカスでは会員制度として「一般会員」と「投資クラブ会員」があります。
    一般会員」・・会費無料、「活かす通信」、各種イベント・セミナー等の案内
    投資クラブ会員」・・希望により正会員と賛助会員に分かれます。年間運営費36,000円、一般会員サービスに合わせて月1回の投資例会を開催しています。
  2. イベントとして「交流会」「IRセミナー」「企業見学会」「カラオケ倶楽部」等を実施しています。
  3. 当メルマガ「活かす通信」の配信登録、アドレス変更、配信解除連絡は〈こちらのメール〉からお願いします。
  4. より高度な具体的な銘柄選びは週間有料メルマガを活用ください。
    週間有料メルマガ:年間 24,000円 毎週日曜日配信です。
    お申し込みは、〈こちら〉からお願いいたします。

【活かす通信】

発行人:特定非営利活動法人イカス

WEB:www.toushi-club.com

*当メールマガジンについてのご意見は以下のメール、
または電話/ファクスにてお願いいたします。

メール:staff@toushi−club.com

電話:03-3432-5859 FAX:03-3432-5869

発行責任者:林 孝 男

【株式投資力クイズの答え】問題に戻る

  1. D〉ワークライフバランスの実現に寄与する物として以前から注目され新型コロナウイルスで加速度的に普及しています。
  2. B〉90%以上の企業がテレワークを継続するとしています。
  3. C〉遠隔医療やネットでのセミナー開催支援をしています。
  4. B〉まだ5G通信が可能なエリアは一部の地域に限られています。
  5. B〉NECはコニカミノルタ(4902)と連携を強化してDXを推進します。