2020年2月25日(No.6)

「最適な分散の数」

株式投信の運用で「最適な組入れ銘柄の数は13だ」と気づいたことがあります。以下がその経緯です。

今から25年前、私は中国への返還が間近に迫った香港で中国株投信の運用を任されました。ファンドのサイズは30億円ほどで小規模でしたが、初めのうちは運用にとても戸惑いました。何せそれまで運用は日本株でも経験がないし、証券アナリストの資格もない、ましてや中国にも行ったことがないし、勿論中国語も喋れない。こんな身分で、とっくに現地に進出している日本の大手投信会社に就任の挨拶に行くと、「今頃香港に来たの。あなたに何ができるの?」みたいな顔をされたことを憶えています。

13牌を横に並べる麻雀

しばらくボーっと運用していましたが、ある日友人と麻雀卓を囲んでいる時、はっと気づいたことありました。それは、麻雀ゲームに使われる牌の種類は、数とか方角などを表す5種類(写真右は数牌の3種類)からなっている。自分が運用対象としている中国株の種類も、上海B株や香港H株など基本的には同じ5種類である。自分の中国株ポートフォリオも、目の前に横に並んでいる13個の麻雀の手持ちの牌と同じように、13銘柄ですっきりと美しく構築してはどうか。そして、それを麻雀のように臨機応変に運用してはどうか。

私は、早速H株が3銘柄、B株が3銘柄、香港株が6銘柄などと、13銘柄を横に並べてポートフォリオを作ってみました。そして、実際にそれで運用してみると、その数から入る手法は、投資判断の迷いを軽減し、私に安心感を与えてくれました。それに対し多くのファンドマネージャーがやっている、50も100も銘柄も縦に並べて管理するような運用方法をとると、組入れ銘柄に序列ができ、ポートフォリオ全体に目が行き届かなくなる傾向があります。

運用で大事なのは、どの銘柄を、何時買うかではなく、幾つの銘柄を買うかだと気づきました。何を何時買うかは、その13という数が自ずと決めてくれるようでした。
私の中国株投信の運用成績は、この麻雀をヒントにした運用手法のお陰で、香港で登録されている全ての中国株ファンドのものを打ち負かすことができました。そして、それを見てか、同業の日本の大手からは、どうしたらそんなに上手く中国株を運用できるのかと、問い合わせも来ました。

13席だけの「味の三平」

この横に並べた13種類を戦略的に使うゲームは他にもあります。ゴルフも、如何なるコースでも普通13本で十分にプレーできます。ついでに、これは商売の話ですが、写真は私が40年前から通っている札幌にある味噌ラーメン発祥の店「味の三平」です。カウンター席が並んでいますね。その数は50年以上前から、お客さんに目が行き届くギリギリの13席だそうです。たぶん、三平はその目が行き届かなくなることを、商売上のリスクと考えていたのだと思います。凄くプロ意識を感じまね。

株式のアクティブファンド運用でも、組入れ銘柄数がやたらと多いのはプロとは言えませんね。かえってリスキーですね。