『適正利潤について』

千葉の県人 鎌田 留吉

私は通称「スーパーマン」と呼ばれている。買い物の際は、値段を比較して購入する為に、必ずスーパーを3軒梯子するからだ。イトーヨーカドーとヤマイチとイオンである。それは「ママチャリの留吉」とも言われる、機動性ある自転車愛好者なればこそできる芸当だ。先月「サトウの切り餅なめらかもち」1kgを買おうと思い立ち、例によって私は3軒、梯子をした。そして、携帯のカメラに収めて値段を比較したのである。最も高いIは977円、最も安いAは698円(税込み)なんと3割近くも違うのである。上場企業としてはIは利益率が高く、Aは利益率が劣ると言われている。「サトウの切り餅なめらかもち」で見る限り、それはそうだろう?そして、投資家としては迷わずIを選ぶことであろう。しかし消費者としては、迷わずAで購入するに違いない。

適正利潤について考えることは多い。

スーパーで考えるなら、仕入先、物流企業、従業員、最終消費者、株主等ステークホールダー皆が、適切な利益を得られる社会であって欲しいと念じている。仕入れ値に(大量発注による力関係でその費用は必ずしも一様ではない)販売費用と利益を上乗せして最終価格が決定される。消費者が支払う最終価格の中に全ての源泉はあるのである。Iのように、それが高いとき、消費者は適正な利益を得ているとは言えない。しかし、Iの従業員は比較的高い給与を得られるかもしれない。かもしれないというのは、この失われた20数年の間に日本の上場企業は株主の利益を経営の中心に据える様になったため、従業員は所得を減らし続けてきた。昨年「賃上げ」という言葉を久し振りに聞くことができた。「内部留保を高める」という言葉は基本的には、株主を最優先することなのだということを忘れてはいけない。

具体的な消費財でしかもナショナルブランドといわれるものは議論がしやすい。しかし、ことが金融商品となると、目に見えず不確定な、株価・為替・金利や生命・健康が対象であり、そこに統計がからまり、ことは急に難しくなる。たとえば投資信託というものがあり、それは当初の3%なにがしかの販売手数料と年間1%なにがしかの運用手数料を取られれば、その運用の結果もたらされる損益は全て顧客に帰属する。投資家が十分に賢明であることを前提に、私はこの仕組みは、販売者にとっても運用者にとっても、資金の委託者にとっても公明で適正な利益配分だと思っている。

ところが、ある種の生命保険や、証券会社の発行する日経平均連動型仕組み債等は、商品設計者と販売者が儲けすぎではないかと疑っている。つまり、前者は払い込んだ金額とリターンとのバランスが、後者はリスクとリターンとのバランスが余りにも投資家に不利になっているとしか思えない。それは商品のコスト構造がをブラインドになっており、本来得られる利益の極く一部しか出資者に還元しないことからもたらされる。

2015.4.14 記