『イエレン議長発言の捉え方』

千葉の県人 鎌田 留吉

5月8日のNY株式市場が、雇用統計の改善を受けて、267ドルも上昇した。私はこの事実に非常に驚いた。「頭おかしいんじゃないの!!」という気持ちだった。今のNY市場の上昇は金融緩和によりもたらされているものであり、景気回復を反映したものではない筈だったからだ。むしろFRBが注目していた失業率の改善は長期間続いた超がつく低金利を終わらせる時期を早め、株式市場には逆風の筈だった。

この株式の大幅上昇という反応について、「今回の雇用の回復が金利上昇を早めるほどではない、適度な景気の回復だと市場は評価した」との解釈が一般的なようであった。私のような驚きの反応はほとんどみられなかった。唯一小幡績氏がそのブログで、「これはどういうことか?」と思考を巡らせ、「投資家が正常な反射神経を失っていることを表しており、深刻な状態に市場が陥っている」と結論つけていた。

この数ヶ月のNY市場が気迷い色を強め、時には景気回復を評価して上昇する、金融緩和相場とはイレギュラーな反応をする場面があったことを私は知っている。

しかし、5月6日にイエレン議長が「株式市場のバリュエーションはかなり高い(quite high)」と強調したばかりだ。その直後の反応にしては、私には極めて異常なものに思えた。そして、要するに、イエレン議長発言の捉え方の軽重こそが、反応の相違となって現れているのだと気づいた。

その後、ブルームバーグの5月15日の「年内利上げ、できますか」という記事を見るに及んで、私は怒りすら感じだした。それにはこうあった。「年内利上げ意欲はFOMCのはったりだ、というのが市場の見方だ」「政策当局者の選択肢は2つ。もう一度市場にタントラム(かんしゃく)を起こさせるリスクを冒すか、歴史的低金利の恩恵に長くあずかりたいトレーダーらに屈するかのどちらかだ」

なんという、舐めきった態度であろうか?

日本でも同様のことがあった。1989年5月、日銀は2年3ヶ月に及んだ2.5%という「超低金利」を終わらせ3.25%とした。私はその少し後、「公定歩合慣性の法則というものがあり、金利は上がり続けるから、金融相場も終焉を迎える。男なら未練残すな昔の夢に」と皆の前で演説をぶったことをはっきりと覚えている。その年、日銀は更に10月と12月に0.5%ずつ引き上げ、4.25%とした。しかし、株価は上げ続けたのだ。私の予測は外れた。

1989年12月末、人々は日経平均5万円説を信じ、38,915円の史上最高値で大納会を迎えた。翌1990年大発会から株価は下げ始めた。舐めきった市場に三重野総裁は怒ったのか1990年3月に一気に1%も引き上げ5.25%とし、更に8月0.75%上げて6%ととした。バブルは破裂した。その後、失われた25年が続くなど誰が予想したであろう。

イエレン議長は確かに警告したと言うであろう。金利だけではなく、バブルも慣性の法則があるのだろう?行くところまで行く。そして崩落する。

2015.5.18記