鎌田留吉レポート
『F=ma』
千葉の県人 鎌田 留吉
「慣性の法則」とは、ニュートンの「運動の第1法則」である「物体は外部から力を加えられない限り、静止している物体は静止状態を続け、運動している物体は等速直線運動を続ける」というものである。しかし、動物や自動車のような意思をもつものは、「外力」によらずとも、自らブレーキをかけて停止し、逆走することさえあるのは言うまでもない。この内なる力を「内力」と呼ぼう。
株式市場は金利の上下や金融の緩和・引き締めという「外力」によりその速度(それには方向と量がある)を変じる。アメリカで、2008年12月から始まった0.25%という超超低金利にいよいよ終焉の兆しが見え始めている。金利上昇という「外力」の作用により、6年以上続いた株式市場の上昇に終止符が打たれ、大きく下落に転ずるであろうと考えるのが一般的である。かく言う私もつい最近まではその考えに与していた。しかし、株式市場には投資主体というものがあり、意思も感情も備えている。つまり単純な物体と違って、外力の加わる前に早めに踊りを止めようとする場合もあれば、むしろ外力の程度を見計らい踊り続けようと意図することもあるのである。今のアメリカ株式市場の主体であるヘッジファンドは、資金の性格上運用し続けざるをえないという特質を持つ。また6年という長きに亙った上昇に慣れ、言わば「慣性の法則」が働いているとも考えられる。
ニュートンの「運動の第2法則」は表題にある「F=ma」である(Fは力、mは質量、aは加速度)。この法則はある質量をもつ物質の速度を変化させる(加速する)ものが力である、というように理解するとよい。加速度(速度の変化率)は力(F)に比例し質量(m)に反比例する。重たいものを止める(速度を0にする)には大きな力が要り、軽いものを止めるには小さい力でよい、ということである。1980年代末の日本の株式市場は、例えるなら時速80kmで走っている250ccのバイクのようなものだ。それに対し今のアメリカの株式市場は時速40kmで走っている5両連結の列車のようなものだ。後者を止めるほうが大きな力がいるのは言うまでもない。日本の場合、1985年9月のプラザ合意を受け1986年2月から金利の再低下が始まり、1987年2月に2.5%になった。その「超低金利」が2年3ヶ月続いた後、金利上昇という「外力」が加わった。
しかし、その後更に2回の金利上昇という「外力」が加わって、やっと天井をつけた。その後は株価がある程度以上下がると、1.売れるうちに売っておこうという「内力」と2.担保不足により切らされるという「内力}が加わって自壊し始めた。アメリカが0.25%という「超超低金利」になったのが2008年の12月だった。それから丸7年。加えるに3度のQEがあったのだ。他にサプライズ的な「外力」もなく、金利上昇という「外力」だけであれば、1回や2回では停止しないのではないか?
2015.6.14記