『世界経済大停滞の予兆』

千葉の県人 鎌田 留吉

8月半ばの中国の元引き下げがきっかけとなって、世界的に株価が急落した。既に中国の株価は6月半ばから7月始めにかけて、32%も下落していたが、そのときは、NYにも日本にも影響はなかった。しかし、今回は強い元が当然視されている国際世論の中での、突然の切り下げであったため中国経済の実態が相当悪いのではとの懸念が広がり、世界的同時株安に見舞われた。

私はこの世界同時株安は世界の実態経済の長期的かつ大きな停滞を暗示していると捉えている。

2008年8月に起きたリーマンショックによる世界的リセッションの救済役たるべく、中国が2年間で4兆元(当時の為替で約57兆円)の経済対策を打ち出したのは2008年11月のことであった。

その主たる方向はインフラ投資や工場の設備投資あるいは住宅投資を主とする不動産投資であったことはよく知られている。その効果があり、2010年には名目GDPで日本を抜き、待望の世界第二位に躍進した。中央政府から地方政府に更なる経済発展の鞭が入ったことは想像に難くない。

投資による経済発展には、二面性がある。仮に1兆元の投資をした場合すぐに1兆元プラスαの経済成長の効果が現れる。しかし、翌年同金額の投資をしない場合にはほぼ丸々1兆元分のGDPがマイナスになるのである。つまり、投資による経済発展というのは、麻薬なのだ。中国はその麻薬を打ち続けた。しかも量を増やして。

また、「諸悪の根源不良在庫」という問題がある。「資産」に計上されている売れないで積みあがってしまった「不良在庫」は価値が減価していき、最悪の場合処分損を出さなければならない。

倉庫代が掛かるだけでなく、支払い原資が回収できない。当面作る必要がないため、原料の納入業者も売り上げは立たない、工場は稼動しない、従業員も馘首されるという問題に発展していく。

「需要と供給のギャップ」、これこそが25年にわたる日本の停滞を招いた元凶である。先頃終わったG20で、中国財政相は「5年は苦難の調整」と発言した。「世界の工場」が大量の「不良在庫」を抱えたのだ。

8月11日から3日連続で元を切り下げた後すぐに、中国はドル売り元買いを行った。それは何故か、思った以上に元売りがでてきたからだ。その主体は中国の実態を知る中国人民であると思われる。

英ポンドがジョージソロスに屈したように、かつて自国通貨安を支えられた国はない。(鎌田留吉レポート2013年9月12日号参照)

日本は企業業績がよいから、株式市場はすぐに2万円を回復するだろう、などと言う輩がいる。

何年証券業界に関わっているのだ?今を時めくトヨタは、2008年3月期に史上最高の26兆2千億円を売り上げ、2兆2千億円の営業利益を誇った。リーマンショックの8ヶ月後の2009年3月期、売り上げは20兆5千億円に落ち(▲21.9%)営業利益は ▲4600億円となった。PERは何倍になったのだ?

2015.9.15記