鎌田留吉レポート
金融機関が多すぎる !!
千葉の県人 鎌田 留吉
筆者 |
この1月から頼まれて、友人が社長を勤める従業員17名の中小企業の経理に関わっている。
そこで第1に感じたことは「金融機関が多すぎる !!」ということだ。売り上げ9億円ほどの会社で、メガバンク3行、地銀1行、そして信用金庫2庫と取引している。
前任者は銀行が床の間を背負っていた時代のひとで、兎に角借りられるだけ借りていようとしたことがその結果となった。メインバンクはその中の信用金庫だ。
全体で、もともと12億円の借り入れが7億5千万円の残高になった今も、3億円の残があり、ほぼ同額の定期性預金残もある。
私の役目は如何に定期性預金を解約し借り入れを減らすか、なのだが、飛び込みで他の地銀や、信用金庫が借りてくれないかとやってくる。
「本当に、金融機関が多すぎる」と日々感じ入っているときに、東洋経済が「マイナス金利が直撃;追い込まれる銀行」という特集を出した。この特集によると上場している地銀だけで全国に83行ある。それが、地元で集めた金の貸出先を求めて、東京へ東京へと進出しており、金利競争を起こしている。日経の金融欄も地銀の再編が大きなテーマになっている。
しかし、私はそれよりも信用金庫の大再編がここ1、2年で起こらざるを得ないと考えるようになった。信用金庫という金融機関に馴染みがないひとが殆どであろうと思う。本来、信用金庫は①会員の出資による、②営利を目的としない、③営業地域は一定の地域に限定されている、④中小企業と個人のみを対象にした金融機関である。現在全国になんと266もの信用金庫がある。東京には23金庫が地域を適当に分けながらせめぎあっている。
金融機関の経営状態を計る指標に預貸率というものがある。貸出残高を預金残高で割った比率をさす。その預貸率で信用金庫は全国平均で50%を割ってしまっている(都市銀行は64%)。メガバンクが中小企業への貸し出しに攻勢をかけ、地銀が出張ってくるなかで、これからますます信用金庫の預貸率は低下していくことだろう。貸し出しに回らないお金は、国債を中心にした債券や株式に回さざるを得ない(その比率を預証率という)。預証率が高まらざるをえないなかでの国債のマイナス金利なのである。
東洋経済には、預貸率が4割を下回る信金のリストが掲載されており、第一位がなんと9.2%の高知信用金庫である。中身を調べてみると平成26年度末で、預金積金残高6,796億円、貸出金残高622億円、有価証券残高5,122億円だ!これはもはや金融機関ではない。有価証券運用会社だ。信用金庫本来の存在理由である「地域の個人、中小企業への融資」と言う役割を放棄してしまっている。しかし、多かれ少なかれ、これが未来の信金の姿になると思われる。この20年間、国債の価格は上がり続けていた。預証率の高かった金融機関は利益を上げ、含み益を蓄えたことだろう。しかしこれからの有価証券投資は極めてハイリスクにならざるを得ない。
かつて、長期信用銀行という存在自体が問われたように、信用金庫という存在自体が問われる日が近いうちにくることだろう。そのとき大量に放出されるこの人たちの行き場は、おそらく無い!
2016.4.19.記