鎌田留吉レポート
立場と価値観でもののとらえ方は変わる
千葉の県人 鎌田 留吉
筆者近影 |
今回、英国民がEUから離脱することを選択したことにつき、①その理由、②その歴史的意義等についていろいろと調べてみた。
言うまでもないことかもしれないが、ある客観的事実があるとしても、その理由・その歴史的意義等については様々な考えがあり、重視する要素も大いに異なるものだということである。そして、それを決定しているものは、その人の立場と価値観なのだ。
このニュースを初めて耳にしたとき、私の感想は、これまで何十年かかけて、世界的に拡大してきたグローバリズムとやらが、おそらく到達点に来てしまい、これからは振り子が逆方向に大きく動き出す、きっかけなのだろうということだった。
「理性的に考えれば経済的合理性から反対を選ぶべきであるのに、国民は移民への反感や、一部エリートへの嫌悪から感情的な政治決定をした」という論調が多かった。私は、そのように指摘する人自身がグローバリズムを善であるというプロパガンダに洗脳されてしまっているのだと考えた。
市場に携わる者の間で、ポジショントークという言葉が使われる。
或る取引対象(株・為替・金etc)を買い持ちする人はそれが上がるような、売り建てている人は下がるような、発言をすることである。
それになぞらえて言うなら、ポジションマインドというものがあるように思われる。
つまり、或る一つの事象がその人が属している立場や階級にとって有利に作用するとき、ひとはその事象が合理的なものであり、万人を利する普遍的なものだと考えがちだ。
日本を顧みれば分かりやすいと思うのだが、生産拠点の現地化で、本来その工場で働くべきであった日本人の雇用は間違いなく失われ、労働の多様化とやらの美名のもとに、派遣社員が増え、それは労働賃金の明かな下押し効果となった。
また中国人やベトナム人の労働者は彼らが働いている分野での賃金の抑制効果をもたらすだろう。
これらはすべてグローバリズムの掛け声のもとで積み上げられたことだ。一億総中流などと言われたことがあったのかと思えるほどに下層の人々が増えている。
にも拘わらずグローバリズムは普遍的「善」であるのだ。
英国やアメリカでは格差拡大という不満を持つ人々が爆発寸前にまでなっているということなのだと思われる。
この原稿を書いている7月18 日(月)の東京新聞朝刊の投書欄にこのような記事があった。「参院選に対して『自民党勝利』『改憲勢力 3分の2』などと報道されたが、福島と沖縄で自民党の現職大臣が落選した意味は重い。」なぜ、落選したのか。なぜ両県以外では自民党が伸びたのかを考えると、福島、沖縄以外の有権者には見えないものが。両県の有権者には見えているということではないだろうか。
2016.7.18. 記