『三橋貴明氏の誤謬』

千葉の県人 鎌田 留吉

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筆者近影

三橋貴明という経済評論家がいる。2007年に「本当はヤバイ!韓国経済、迫り来る通貨危機再来の恐怖」を出版し、以来、出版に講演に多忙を極めている。毎日「新世紀のビッグブラザーへ」というブログを書き続けており、私はほぼ毎日目を通している。そのブログ(例えば2016.11.12号)で彼は、日本が抱える財政赤字につき特に2つの点を強調している。

1つは財務省が「『国の借金』が9月末で1062兆円となり国民1人当たり837万円の借金を抱えることになった」と言っているプロパガンダが誤りだというもの。「国の」ではなく、「政府の」が正しい、むしろ国民は政府の負債の債権者であるというのである。

2つは、政府の子会社である日銀が現在行っている異次元の金融緩和策は、親会社と子会社のお金の貸し借りとして相殺され、実質的に政府の負債は驚異的な勢いで減少しているというのである。

第1の点について、彼はこのような指摘をすることにより果たして何を言った気になっているのだろうか?抑々政府とは、「日本国民」を代表して行動する主体である。直接民主制でない限り当然のことだ。多々不満はあろうが、安全・インフラ・健康・介護・社会福祉・教育等々、毎年国会の承認を得た予算に基づき行動しているものだ。その福利は、国民が享受している。本来的には税収の枠内で執行されるのがあるべき姿である。それを借金で賄った場合その不足部分は税金で調達する以外方法がない。つまり国民は自分たちが受けた利益は自分たち国民で税金という形で支払わなければならない。これが現在及び将来の「国民の負債」でなくてなんであろうか。

第2の点だが、政府と日銀とで相殺されるとして、政府と日銀とが一体となった主体(=日本国政府)の貸借対照表の負債の部に当座預金の残高が残り続ける。その当座預金を資産にもつのが三菱UFJ銀行であり、りそな銀行である。そして銀行の貸借対照表の負債の部には三橋氏が債権者とする国民の預金が計上されるのである。国と日銀が一体となった債務者に債権者たる国民は求償し続ける。つまり国債は少しも減ってはいないのである

日銀が銀行から国債を購入するとき、国債を売却した銀行が日銀に保有する当座預金の口座にお金が振り込まれる。これは通貨発行と同義である。これにより通貨量は増大する。本来なら通貨価値はその分減価する筈のものだ。では何故日本において通貨価値が減価しなかったのか?どの様な事態になれば減価するのか?臨界点は近いのではないか? 

2016.12.20 記