『武者陵司氏から学んだこと』

千葉の県人 鎌田 留吉

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筆者近影

13日の土曜日、茅場町の証券会館で、元ドイツ証券のストラテジストだった武者陵司氏のマクロ経済に関するセミナーがあった。

極東証券という極めて個性的な証券会社に招待を受けたのだ。私はこのようなお招きには基本的に参加するようにしている。なぜなら、一角の人は私が知らない何らかのファクターに気づいており、私に何らかの気づきを与えてくれると信じているからだ。

このセミナーで私は武者さんから特に2つのことを学んだ。
1つは、アメリカも日本と同じに、トランプ大統領が強調している「貿易収支」から「経常収支」に軸足が移りつつあるということだ。つまり「経常収支」の大宗が「貿易収支」から「サービス収支」と「所得収支」の和に移りつつあるということである。アメリカの貿易収支赤字は8000億ドルで横這っているが、経常収支赤字は8000億ドルから4000億ドルに半減しつつあるのだ。それはサービス収支と所得収支が大幅に伸びているからである。米国企業の海外留保利益は10年で5000億ドルから2兆5000億ドルに膨らんだという。その分所得収支は膨らむということだ。

2つ目は、レーガン大統領と比較したトランプ大統領が強いアメリカを再現するだろうという話の中で、poor-white や格差の不満があるが、「非常に小さな問題」だとさらっと流したことだった。トランプ大統領誕生という「事件」の背景である poor−white や格差の問題を「小さな問題」ということ自体がトランプ大統領の誕生意義を閑却しているということであり、歴史の流れを正しく把握していないということである。
そして、このような歴史認識の彼我の差を生じさせる根本はイマジネーションの差なのだということだ。国語を学ぶとき、論理文だけではなく詩や小説があるのはイマジネーションの涵養のためなのだということを彼は体験してこなかった。

2017.5.16 記