鎌田留吉レポート
2017年8月15日
『供給過剰社会 その1』
千葉の県人 鎌田 留吉
筆者近影 |
私は千葉県の船橋市に住んでいる。船橋といえば「ららぽーと」の第1号旗艦店があることで有名だ。しかし、船橋には日本一大きな「ギガ・ダイソー店」があるのだ。地上6階地下1階これ全部ダイソー。上から下まで、全部ダイソー!15〜6年前に初めて行ったとき、「え!これが100円!え!これが100円!」と驚きの連続であった。「作っている人が可哀想だな!」そういう感想を持ったことを憶えている。これは、①「グローバル化」と、②「技術革新」がもたらした大きな成果であろう。
少しでも安い労働力を求めてメーカーは生産拠点を、或いは中国に求め、或いはミャンマーへ、或いはベトナムへと移していった。それを可能にしたのは、技術革新により自動化が進んだ優れた生産手段だった。有り余った金でファナックのロボットを購入しさえすれば、さしたる教育も、技術蓄積も必要とせず、人差し指一本で世界的な生産拠点となることができるのだ。
昔「タッパーウェア」という高価なプラスチック容器を、ホームパーテイを開くために購入したことがあった。(今もあるようだが)しかしプラスチック射出成形機の急速な発展で、ダイソーには安価で品質も悪くないプラスチック容器が山積みされている。
かつて「鉄は国家なり」と新日鉄が誇っていた頃、鉄の製造には余程高度な技術が要するように思えた。しかし、これも(いくら日本の技術供与があったとはいえ)質は劣るが、今や中国が世界の生産量の半分を生産しうるほどになってしまった。
世界の製品群は供給過剰状態にある。これでは、黒田日銀総裁が幾らマネーをばらまこうとしてもなかなかデフレからの脱却は難しい。
この供給過剰という現象はひとり「もの」の分野に留まらない。「自己表現」を望む人々も供給過剰であると、日々実感している。下北沢に行けば、なんと沢山のミニ劇場のあることよ。独り善がりの脚本を書いて、大仰な身振り手振りで演じている例もあることだろう。俳句ブームというのもそうだ。毎年NHKホールで全国俳句大会が開かれ3,000人が集まるそうだが、3,000人全員が作り手である。「表現者」の供給過剰に対してその「表現」を受容したいという「需要者」の数は全くバランスを欠いていることだろう。
少女達の「有名になりたい」「自己表現したい」という欲求をうまく取り込み、需要者を創出して低迷するCD売り上げを高めるビジネスモデルを作り上げたのが、AKB48を創出した秋元康氏だ。
握手会でまずCD売り上げと親近感を確保し、「総選挙」でメンバーと支持者の競争心を煽り、聞くためではなく、投票する権利確保のため何枚も(人によっては何百枚も)聞かれないCD売り上げがたつ。作詞者である彼にはそのたびにチャリ〜ンと印税が入る組みになっている。天才的だ!
お前には、表現者としてのプライドはないのか?
2017.8.15 記