『供給過剰社会 その2』

千葉の県人 鎌田 留吉

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筆者近影

現在先進国で最も供給過剰なものは、MONEYである。そこではリーマンショック以降、中央銀行が、景気刺激を目的として、異常な金融緩和を継続している。
 9月15日現在10年国債の利回りは米国2.206%、英国1.309%、独0.434%、日本に至っては0.021%である。
 この意味はお金の価値が極めて低いということである。現在大阪ソーダ(4046)という会社が新発のCB(転換社債)を募集中だが、その条件は発行価格102.5円、償還価格100円(つまり償還時2円50銭のマイナスになる)。利率0%。転換価格が、終値529円の時に688円で決定。つまりアップ率は何と30%である(私が現役の頃のアップ率は3〜5%が普通であった)。投資家にとって極めて条件の悪いCBが罷り通る位に運用物件がないということである。

そのような環境下であれば、あらゆるものの投資尺度が変わってくるのが当然のことであろう。2014年8月「伊藤レポート」なるものが出され、8%のROE(自己資本利益率=当期利益÷自己資本)を要求した。そりゃ「企業は株主のもの」と考える株主至上主義者の投資家は、何でも高いほうがいいに決まっている。企業が投資家の資本コストを上回るROEを目指すのは当然である。資本コストは投資家が期待する株式の期待収益率である。しかし、株式への期待収益率は国により、時代により、企業により違ってくるものである。あたかも、未上場企業において、その発展の Stage により、お金の集まり方が違うのと同じだ。

サマーズ氏が「長期停滞」といい、水野和夫氏が「フロンテイアが消滅した」という超低金利の「このご時世」に8%ものROEを要求するというのは欲の皮の突っ張り過ぎというものだろう。

しかし、日本に於いてROEは徐徐に上がってきた。それは極めて重要な Stakeholder である従業員の賃金を削減することによって齎された企業業績の回復と、自社株買いと配当を合わせた株主総還元の増加による。ROEの要求が低く保たれていれば日本における労働分配率の大幅低下も避けられたかもしれない。

では、今の日本において、適切なROEはいくらなのだろうか?REITの平均利回りである4.1%が目安になるのではなかろうか?

2017.9.19. 記