『インフレの足音が聞こえる‥‥カタカタカタ‥‥』

千葉の県人 鎌田 留吉

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筆者近影

11月15日付の日経「大機小機」に「世界の物価が上昇に転じた」という記事が出ていた。0%台のインフレ率をうろついていて、黒田バズーカの限界ばかりが取り沙汰されている日本の現状を知る者にとっては、全く寝耳に水の記事であった。
論者は言う。世界経済の拡大が始まっており、それと共に世界の物価も上がり始めた。世界主要50カ国の消費者物価の加重平均でみると、昨年9月に上昇に転じた。今年3月には新興国の物価低迷にも歯止めが掛かり、8月に50カ国すべてがプラスになり、9月は2.2%と2%を超えた、と。そして結論付ける「世界の物価上昇が始まっている。」

日本も、17年7〜9月期は①CPI②GDPデフレーター③単位労働コスト④GDPギャップの4つの指標がそろってプラスになった。まさにインフレの足音が聞こえ始めたのではないか?カタカタカタ‥‥。

物価に大きな影響を与えるWTI原油価格が2016年前半の30ドル割れからほぼ倍の58ドルを付けるに至った。上場企業が3年ぶりに増収となり2年連続最高益になる。これは資源価格の上昇と、世界経済の回復、そして何よりも円安・ドル高によるものである。17年4〜9月の円相場は1ドル=111円と前年同期より約6円の円安で(因みに12月19日現在112円62銭)、円相場がこの水準で推移すれば、今期の上場企業の売上を約1ポイント分押し上げ純利益を約3ポイント分押し上げるとみられる(日経11月15日1面)。それであるなら、逆に言えば、輸入業者である国内産業にとって実に苦しい数年間であった筈だ。彼らはブラック企業と言われようと、デフレマインドの蔓延した国内で値上げに走るよりは、従業員を過重労働に駆り、サービス残業を強いながら、じっと値上げせずに堪えてきたのだ。

しかしクロネコヤマトの宅急便の値上げにより状況が大きく変わった。ヤマト運輸は2015年頃から値上げの世論喚起を行い、2017年4月28日に運賃改定の発表を行った。そして徐々に値上げを実施してきた。このヤマト運輸の値上げは2つの意味で画期的である。
1つは物流の要である運賃の値上げは、仕入れ値に影響し、販売値に影響する。企業は強烈な価格転嫁圧力を受けることになる。
2つ目はより重要だと思われるのだが、国内企業の間に「値上げしてもいいのだ !!!」という感慨を抱かせたことである。事実その後は堰を切ったようにアサヒビールが大瓶10%値上げし、居酒屋「鳥貴族」が均一メニュー280円を298円(6.42%)に値上げした。ハイデ日高がビール20円、ハイボール10円、餃子10円値上げ。リンガーハットも平均4%、日清オイリオもオリーブオイルをキロ当たり20円以上値上げした。

息を潜めて耳を凝らして欲しい。インフレの足音が聞こえてこないか?
カタカタカタカタカタカタカ‥タカ!‥高 !! 高 !!!

2017.12.19 記