鎌田留吉レポート
2018年1月18日
『電気自動車EV(Electric Vehicle)に水をさす』
千葉の県人 鎌田 留吉
14日からデトロイトで北米国際自動車ショーが始まった。電気自動車EVが大きなテーマである。昨年の株式市場のテーマもAIと並んでEVが一つの大きなテーマであった。
7月に英国政府と仏政府が、2040年までにガソリン車を廃止することを相次いで発表したことに端を発している。また9月に中国が、2019年から新エネルギー車〈New Energy Vehicle〉〈EV,PHV(プラグインハイブリット車),FCV(燃料電池車)〉の比率を生産台数のうち10%以上にすると発表したことから、未来車は完全にEVに方向性が定まったかのようである。
EVは古くからの技術であるモーターを使うので、エンジンという高度な技術蓄積をもつ主体に限られることなく、参入障害が少ないと異業種からも手が挙がっている。しかし、モータージャーナリストの清水和夫氏によると、ことはそれほど簡単ではないようなのだ。EVは電池にこそ最大の問題があるのだ。
- 充電に長い時間を要すること。
- 走行距離が400Kmほどしかないこと。
- 充電のためのインフラがまだ整っていないことなどがよく知られている。
しかし、電池の問題点はそれだけではない。
- 適正使用温度が15度から40度くらいの範囲であること。これと比較してガソリン車はマイナス30度から灼熱の60度の砂漠まで使用可能だ。
- バッテリーは電気化学反応であるため劣化が宿命的なのだ。3,4年乗ればバッテリーは劣化してしまうため中古価格が極めて安くなる。
- 高速で走行すると電気量が急速に減衰する。従って時速150kmで長時間走行するということが不可能である。その証拠にアウトバーンで有名な独政府は「デイーゼル車及びガソリン車の禁止はドイツ政府のアジェンダには存在しない」と発言している。
つまり、EVはその使用方法を限定される可能性が高い。
そのため、トヨタ自動車とパナソニックがEVなどの車載用電池事業で提携を強化することを発表した。その席で豊田章男社長は単独での開発には限界があると率直に認めた(2017.12.14 読売)「規制のスピードに開発が追い付いていない。2030年頃に販売台数の50%以上を電動車両にするには、今のままでは難しい」としている。
そして、この1月8日に、ラスベガスで開催された家電見本市で、トヨタが発表したのは、EVはEVでもエリア限定で、東京五輪で大会関係者の移動で実験使用する予定の多目的EVだった。つまり、高速で長時間走行できるEVをトヨタは今のところ作りだせていない。
清水氏はC02フリーで高速走行できて燃費のいい車はFCVしかないと断言するのだ。
日本国政府はEVには意見を述べてこなかった。その理由は年の瀬も押し迫った2017年12月26日に閣議決定された「水素基本戦略」で明らかになった。日本は水素(=FCV)で行くのだ。
2018.1.16 記