鎌田留吉レポート
2018年2月20日
『金融機関の利益について』
千葉の県人 鎌田 留吉
商工中金が4年後に完全に民営化することを前提に組織改革することが決まった。
このことにつき私は基本的に反対である。先ず、第一に2016年4月の本欄でも述べたように既に過剰すぎるほどにオーバーバンキングである現状に同工異曲の金融機関を更に送り出すことは百害あって一利もない。むしろ私は、危機対応専門の金融機関としての機能を主たる責務とし、完全国有化した存在としてこそ残すべきだと思う。何故なら民間金融機関は、本格的な危機に遭遇した時「預金者保護」という美名のもとに100%融資を引き揚げようとするからである。そして彼ら民間金融機関は、「このような事態において企業を救済することは我ら一民間が負うべき責務ではない!」と声高らかに叫ぶのだ。
常日頃は、そのように大切な「預金者」がなんと等閑にされていることよ!
一般企業のステークホルダーになぞらえるなら、「預金者」は株主と比肩される「債権者」に該当するはずだ。しかもペイオフ実施以降は完全には保護されていない。それにも関わらずそのリターンは0.01%というとんでもない低さである! 2月20日現在、三菱UFJの配当利回りは2.30%、みずほに至っては3.73%もある。このような株主に対する優遇と比較すると、「預金者」=債権者への冷遇、ここに極まれるではないか?
0.01%の「預金者」への付利が調達コストのすべてではない。金融機関の種類によってそのコストには大きな差がある。しかし、多くを決定するのは貸し出し金利である。この平均を仮に1.5%とすると、この基準がすべてを決定する。民間金融機関はこの金利1.5%と0.01%の差の利鞘から、三菱UFJを例にとるなら、その従業員の高額な給料と一等地の部屋代を払い、4,300億円ほどの税金を支払ったうえで、9,264億円の利益を上げている。(2017年3月期)その利益の中から2,550億円を株主のための配当にまわしているのだ。民間金融機関がこの利益を少し減らして、貸し出し金利を0.2%下げてくれたとしたら、10億円借りている中小企業は200万円の利益が上乗せされるのだが・・・・。
商工中金が仮に完全に国営化された場合、この膨大な利益を出す必要がない。その分、よりリスクの大きい(お金を必要としている)企業群に回すことができるのだ。
自然災害大国である日本の、しかも火山が明らかに活動期に入った日本において、また国際的な超超金融緩和が継続し、更に異次元の金融危機の種が深く静かに蒔かれてきたこの日本において、危機における民間企業を救済する存在としての「商工中金」を必要とする「刻」は「既に朝夕に迫れり」(徒然草第49段)である。
2018.2.20 記