AIは意味を理解しない

千葉の県人 鎌田 留吉

12月9日(日)の日経一面は異様な誌面だった。

ソフトバンク(9434)の公募価格決定直前に「異形の利益日本一』」との見出しで「ソフトバンクの実像」と題する特集が3日に渡って組まれたのだ。

それはソフトバンクG(9984)の利益が「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」の評価益によっている危うさを指摘したものであった。

私は孫正義氏が主催するこの「SVF」は以下の3つの理由で失敗すると考えている。

  1. (写真:時事通信フォト)
    この30年間に起こったICT革命はまさに人類始まって以来の革命であったと思う。
    何故なら、先ずPCが企業を中心にして、「1人1台」という規模で導入され,やがて家庭でも「1人1台」という規模で購入されていったことである。
    マイクロソフトのオフィスについてデファクトスタンダードという言葉が宣伝されたのも記憶に新しい。
    ついで携帯電話が「1人1台」普及しその半分近くが、スマホに置き換わっていった。ある程度の値段がする製品が短期間に「1人1台」に行き渡るなどということは人類史上初のことである。
    それらを介するインターネットによりを全てのひとびとが、ニュースを見、調べものをし、音楽を聴くようになった。
    この事象を司る企業群のトップが、相次いで1兆ドル企業となったのは、むべなるかなである。孫氏の幸運はその渦中に身を置きその果実の殆どを手にした。しかし、AIが作り出すと思われる製品は今や多数の企業が挑戦しており、頭抜けた企業というものが出にくい。なによりも介護ロボなどは病院に数台あればよいようなものであり、「1人1台」というような商品にはなりえない。
  2. アメリカの投資家ハワード・マークス氏も指摘していることだが「1,000億ドルもの資金を思慮深くテクノロジー分野に投資できるとは思わない。」「1990年代にとても成功したベンチャー・キャピタルは1~2億ドルを調達した。そしてドットコム・バブルのときには3桁のリターンを達成した。
    これによりVC各社は10~20億ドルの資金調達をした。そして著しく失敗した。余りにも少ない投資案件に余りにも多くのVCが殺到したのだ。」
    金余りの世の中で、投資対象は枯渇していく。
    たとえ投資先を確保できても、投資価格は高くなっている。リスクは高く、リターンは低くなってしまう。
    VCの投資の特徴である一つの投資先の成功で20の投資先の失敗をカバーするということができない。
  3. 孫氏が先の日経の記事で説いている「人類史上最大の革命、人工知能(AI)革命を起こした人々を幸せに」という理念の前提そのものである。
    新井紀子という数学者が「AIvs 教科書が読めない子供たち」の中でAIができることとできないことを詳細に論じている。そして彼女は断じるのだ。シンギュラリテイ(technological singularity=技術的特異点)はこない。つまり「人間と同じような知能を持った『真の意味でのAI』が自立的に、人間の力を全く借りずに、自分自身よりも能力の高い『真の意味でのAI』を作り出すことができるようになった地点」は来ない。
    何故なら「AIはコンピューターであり、コンピューターは計算機であり、計算機は計算しかできない。・・・ 人間の知的活動全てが数式で表現できなければ、AIが人間にとって代わることはありません」と。
    数学が獲得したのは論理と確立、統計という3つの言葉だけだった。
    従って「AIには文章が読めない」のだ。彼女が2017年の「TED」で「東ロボくん」(AIが東大合格を目指すプロジェクト)に関するプレゼンをし終えたとき、Siri の開発リーダーであったトム・グルーバーが囁いた「紀子、きみが言っていることは正しい。AIは意味を理解しない」。

2018.12.17 記