鎌田留吉レポート
2019年3月25日
Modern Monetary Theory(現代貨幣理論)
千葉の県人 鎌田 留吉
MMT(Modern Monetary Theory【現代貨幣理論】)の議論が米国で喧しい。「自国通貨建てで借り入れができる国は、通貨を際限なく発行できるためデフォルト(債務不履行)に陥ることがなく、財政赤字を心配する必要がない。」という考えである。
2月26日の米議会でFRBのパウエル議長がこの考えにつき質問されたとき、「全く間違えている」と答えたことで、議論に火が付いた。
錚々たる人々が相次いで参戦した。グリーンスパン氏は「外国為替市場を閉鎖しなければいけないね。どうやって為替交換すればいいのかね。そんなことが可能ならみんな自国通貨から逃げ出そうとするだろう。」と答えた。ハーバード大学教授のケネス・ロゴフ教授も「投資家が国債を保有したがらなくなったら、その通貨についても所有したいと思わないだろう。通貨を投げ売りしたらその結果はインフレだ」と言って否定している。更に元財務長官のローレンス・サマーズ氏は、いわゆるフリーランチを与える理論だとし、ブードウ―経済学(編集註:Voodoo Economics、呪術経済学)の再来とみている。 「MMT論者は閉鎖経済に基づいて議論するが、これを実行すれば為替レートが崩壊する可能性が高い。これがインフレを高め、長期金利を上昇させ資金逃避を増やし実質賃金を押し下げる。」として反対している。
この理論を強く提唱するのはニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授(写真)だ。この人物は2016年の前回大統領選でバーニー・サンダース氏の顧問を務めた。この議論が高まりをみせているのは、昨年の中間選挙で議席を獲得した民主党急進左派の台頭がある。「新社会主義者」とさえ呼ばれている彼らは温暖化対策への財政拡大、国民皆保険の導入、高所得者層への高率課税による過激な所得の再分配を求めている。
世界中で超・超がつく金融緩和政策の限界が明らかに出てきている。本来なら財政政策を発動できる余地がないから、金融政策に委ねられた景気刺激であったはずだ。それが他に打つ手なしということで再び財政政策を中心に据えざるを得なくなったと思われる。その為、目的が単なる「景気刺激」では説得性に欠けると思ったのであろう、もっと天下国家的な問題やグローバルな問題解決のため、例えば「完全雇用の実現」のため或いは「国民皆保険の導入」のため、或いは「地球環境を救うため」という壮大な理念を掲げることになったと思われる。
MMT理論を既に実施している国がある。対GDP比債務残高ダントツ1位の236%を誇る我が日本である。無力感からか、その国ではもはや議論さえ起らない。それに対し108%の米国でこのような議論が
澎湃
として起こっているということは、まだまともな国であることの証であろう。
抑々
、政府の支出は税金で賄わなければならないのか?いっそ税金を無くし、貨幣の増刷だけで賄ったらどうだろうか?
対内的にも、対外的にも貨幣価値が毀損されることはあきらかではないか?
2019.3.20 記