「MMTを実践してきた中国の末路」

千葉の県人 鎌田 留吉

ヘイマン・キャピタルのカイル・バス氏(写真)が、「中国はこの10年間で、世界の歴史におけるどの国の通貨発行総額よりも多い」「30兆ドル相当の人民元を発行しており、それが為替レートの大幅調整を引き起こす」懸念を指摘している(The Financial Pointer 2019.3.8.)。

実は私もリーマンショックの対応として4兆元(約65兆円)の財政出動をした時から、その原資は通貨の大量発行により賄われる筈でその累積により「元」は大きく減価するであろうと言い続けてきた。しかし残念ながらこの10年近くその予想は大きく外れまくってきたのだった。

それは何故だったか?「元」通貨が売られる要因よりも買われる要因が大きく勝っていたからであった。私が大阪の事業法人担当から、急遽ファンドマネージャー就任を命じられたのは平成5年(1993年)だった。
当時は中国ブームで、私の初仕事は中国関連の銘柄をピックアップすることだった。中国に関心を抱いている企業は全て中国を市場として考えていた。彼らはその支払いを元で受け取るつもりなのだろうか?外貨の蓄積のない国の支払い能力など全くないではないか?そういう疑問をもった。
案の定、中国への関心は急激に薄らいだ。当時中国で着実に売り上げを伸ばしていたのがミシンのJUKI(6440)であった。世界のアパレル工場となることが、「世界の工場」の嚆矢となった。先進国の企業は中国を市場としてではなくその安い労働力を利用する拠点とすることに方針転換した。

中国には多くの合弁企業が作られ、多くの「元買い」需要がおこった。
中国資本が50%以上を持つ企業が外国に輸出するときそれにより生じる国としての貿易黒字は100%中国に属する。従って中国は対外純資産を着実に積み上げることになり、中国は投資先としての(=「元買い」の)魅力を募らせていった。それは外国からの中国投資(=中国の対外負債)が積みあがることと同義である。

2018年現在の中国の対外純資産は日本が第1位の317兆円、中国が第3位の197兆円である。それに対し、政府が保有する対外純資産である外貨準備高は中国が第1位の352兆円、日本が第2位の137兆円である。

このことは何を意味するかというと、①日本の民間部門が持つ対外純資産は180兆円であり、中国の民間部門が持つ対外純負債が155兆円であるということである。②日本が円高圧力を抑えるために大量の円売りドル買いを行い137兆円の外貨準備を貯め込んだように、中国も元高を抑制するために大量の元売りドル買いを行い352兆円の外貨準備を貯め込んだということである。
つまり、そうせねばならなかったほどに中国への直接投資と証券投資の為の元買い需要(=元高圧力)が大きかったということだ。2014年に4兆ドルまで積みあがった外貨準備高が15年のチャイナショックで3兆ドルすれすれになった。中国から逃避する資金の元売りに対抗するため、中国政府がその保有するドルを売って元買いに1兆ドルを費やした証左である。

そして、米中貿易戦争による中国経済の減速という「今」を迎えた。「元売り」要因が「元買い」要因を上回る下地が整った。中国の賃金の上昇で既に始まっていた、生産拠点を中国からベトナム等に移す「元売り」ドル買いが、中国からの輸出に課せられる関税を逃れるため、加速されようとしている。
更に中国の膨大な民間の負債が不良債権化される蓋然性が高まった。中国の外貨準備が減りだしたら、元暴落の始まりとなる。今や元を買う主体は政府しかないのだ。

2019.4.12 記