「彼我の差 - その2」

千葉の県人 鎌田 留吉

サッカー女子W杯で優勝した米のラピノー選手が、男子チームと女子チームの間にある大きな賃金格差を是正するように求めているという。「実質的に同じ働きをしているのに」というのが理由である。

しかし、本当にそうだろうか? FIFAにどれだけの収入をもたらしたかにより見返りは自ずと規定される。そしてそれはつまるところ「どれだけ客を呼べるか」によって決定される。貴重な時間を割いて、遠路はるばる、高いお金を払って、 態々 ( わざわざ ) 見に来て下さる人々をどれだけ擁しているかによるのだ。その数はそのスポーツの経験者または愛好者の人数により規定されるだろう。
女子サッカーといえば2011年の大震災の後、澤穂希選手の活躍で見事優勝したことが懐かしく思いだされる。あの時日本中が大きな感動に包まれたのだが、その後も女子サッカーの試合を見に行ったひとの数はJリーグと比べたなら大きく見劣りすることだろう。

「どれだけお客を呼べるか」これはひとりサッカーのみならず、他のスポーツ・芸能にも言えることだ。ある人は「市場がいくら払うかだ」と表現している。
フォーブスによると、2017年12月時点でスポーツ選手生涯収入ランキングの上位10位の内ゴルフが4人で最多、バスケットが3人、ボクシングが1人、サッカーが1人となっている。ここでも米国の独壇場で、8人が米人で、独人英人が1人ずつだ。因みに1位はマイケルジョーダンの2035億円、2位がタイガー・ウッズの1870億円となっている。

我らが資金運用の分野となると更にアメリカの一人勝ちは際立つ。ファンドマネージャーの資産保有(2017年、$=100円)第1位はオマハの賢人ウオーレン・バフェット氏の7兆6千億円は別格として、2位ジョージ・ソロス氏2兆5千億円、3位ジェームス・シモンズ氏1兆8千億円と続く。10位のデビッド・ショー氏の5400億円まで全員がアメリカ人だ。

ウォーレン・
バフェット氏
ジョージ・
ソロス氏
ジェームス・
シモンズ氏
澤上篤人氏 藤野英人氏 清原達郎氏 村上世彰氏 阿部修平氏

日本のファンドマネージャーというと、さわかみ投信の澤上篤人氏、ひふみ投信の藤野英人氏が今を時めいているが、おそらくこのお二人も100億円はないと思われる。
2004年に高額所得第一のサラリーマンとして耳目を聳動させたタワー投資顧問の清原達郎氏も100億円の年収を得たが今や殆ど喪失しているらしい。村上ファンドで名を馳せた村上世彰氏は200億円ほどを保有しているかもしれない。

個人名で「どれだけお客がよべるか」つまりそのファンドマネージャーの名でどれだけお金を集められるかがそのファンドマネージャーの収入と資産を決定する。
1999年から運用を始めたさわかみファンドは20年かけて3000億円弱。ひふみ投信が1300億円、阿部修平氏が筆頭株主(39.4%)のスパークス・グループ(時価総額465億円)が30年かけて各種運用の合計で1兆1000億円を集めている。

ビル・グロス氏の後を継いで「新債券王」の異名を持つ、ダブルライン・キャピタルを率いるジェフリー・ガンドラッグ氏(写真右)は2009年独立し、2016年9月には運用資産が1060億ドル($=100円で10兆6000億円)に達したという(「カリスマ投資家の教え」日経ビジネス人文庫による)。この彼我の差はなんなのか?

令和元年7月18日記